スパルタは必要か

過去に少なくとも三度は、誰かに教えてもらって叩き上げられたことがある。

一度目は中学の部活動、

二度目は高校の部活動、

三度目はバイトを始めて一、二年のころ。

幸いにも体罰と呼ばれるものには一度も遭遇していない。

 

一度目は人を選んで執拗に叱る指導者だった。彼にとって優秀な学生には随分優しくするが、合格ラインに達さない者には尊厳を傷つける言葉を吐くので酷く士気を削がれる。どれだけ毎日欠かさず来ていても。

いくら叩き上げるといっても、相手の姿勢や本質を見ずに叩くだけの指導には何か保身めいたものというか、こちらのことを考えていない態度が見えたので、未だに好きにはなれない。

 

二度目はとても厳しい先輩だった。練習の時には体が壊れるんじゃないかと思うくらい無茶をさせられるし、それに付いていけないという姿勢を見せるとさらに状況は酷くなるという、団体のボトムを底上げするタイプの指導だった。

三度目もとても厳しい先輩だった。他の先輩や店長に僕が心配されるくらい凄まじい指導だった。一度の指示は滅茶苦茶に多いし、同じ時期に入ったからと言って部活動と両立している僕とは全くシフトの数も違うのに同じ運用をさせられた。

彼ら二人は未だに思い出話に出てくる人達で、「あの人めちゃくちゃだったよな」とか、「あのやり方はどうかと思う」とか、とにかく話題に欠かさない、誰にとっても印象深い人達だった。批判も数多く受け止める人達だった。はっきり言ってすごく酷い目に遭わされたと思っている。

でも彼らのことを僕はむしろ感謝しているし尊敬している。

彼らが何を思って僕をこんなひどい目に遭わせたのかは定かではないけれど、

批判を甘んじて受け入れ、そうやってでも僕を叩き上げようとしてくれなければ、きっと僕は全然成長できずに終わっていたと思うのだ。

 

ブラック企業だとか、昭和な考えの指導とか、とにかく努力を推して厳しい練習を重ねる思想は古いと批判される昨今だけれど、

少なくとも僕にとってはあの方法が必要だったと今でも思うのだ。

今成長しないと絶対にここにはいられない、とか、なんだかんだこの人ってすごい仕事できるしこの実力を超えないと文句は言えないよな、とか、そういうことを考えると僕はものすごく元気をもらえる。

僕にとって先駆者となる指導者は必要だったと思う。